お役立ちコラム

自動車センサ技術の重要性とは。
自動運転への活用と今後の動向

近年の自動車の技術の発展には目覚ましいものがあり、新しく販売される自動車には、運転支援や自動制御システムが標準で装備される時代が訪れています。
また、高度な自動運転も実用化の段階にあり、加速度的に技術開発が進んでいます。
運転者をサポートする予防安全システムや自動運転を支えているのが、自動車に搭載されているさまざまなセンサです。

本記事では、自動運転に焦点を当てながら、自動車に用いられるセンサ技術の種類や役割、今後の展望について解説します。
自動車のセンサ技術について知識を深めたいかたは、ぜひ参考にしてください。

自動車の自動運転におけるセンサの必要性

自動車の自動運転を実現するには、センサはなくてはならない存在です。
まずは、自動運転においてセンサが担う役割と、その重要性について整理しておきましょう。

自動運転システムは、センサを通して障害物や周囲の状況を検知し、その情報に基づいて自動車を適切に動作させます。
センサが検知したデータはコンピュータで分析され、駆動パーツに指示が送られることで、ブレーキを踏む、ハンドルを切るといった運転操作が自動で行われます。

センサは、人間に例えると視覚や触覚のなどの感覚機能にあたります。
信号が青に変わったのを「目」で確認して横断歩道を渡る、シャワーを浴びていて目が開けられない時に「手」で蛇口を探してお湯を止めるなどの日常生活の動作と同じように、センサは周りの状況を把握して次の行動に繋げるための「目」や「手」の役割を担っています。

安全で快適な自動運転のためには、一つひとつのセンサがきちんと機能することが重要です。
その意味では、センサは自動運転にとって「命」といっても過言ではないでしょう。

自動運転用に使用される各種センサの役割

ここからは、自動運転で利用されている各種センサの特徴と役割をご紹介します。

自動運転は、いわゆる「センサフュージョン」が求められる分野であり、用いられるセンサも実に多種多様です。
複数のセンサを組み合わせることにより、検知の信頼性や精度の向上が期待できます。

自動運転に使われるセンサは、周囲の状況を認知するためのカメラやミリ波レーダーなどのほか、車がどのような動きをしているのか、あるいはどんな方向を向いているのか、といった運動感覚を担うセンサもあります。

ビューカメラ

ビューカメラは、「視覚」の機能を担うセンサです。
自動運転ではないものも含め、既に多数の自動車に採用されており、運転者の操作を支えています。

ビューカメラとは

ビューカメラは、カメラで取得した画像から、人や障害物、白線、信号や標識などを検出・認識するために使われています。
たとえば、ビューモニター・マルチビューなどの名称で一般的な自動車にも搭載されているシステムは、車の前後左右に搭載されたカメラの映像を組み合わせて視点を変換し、まるで上から車両を見下ろしているような映像をディスプレイに表示します。

運転支援という観点では、ビューカメラの搭載により自動車の側方や後方など、目視で確認できない死角を大幅に減らすことができます。
周囲の状況が確認しやすくなるため、狭い場所での駐車もスムーズになるでしょう。
また、標識を認識して速度超過警告を行う、白線を検出して自動車の車線逸脱を警告するなどの運転支援機能もあります。
自動運転においても、カメラは重要な役割を果たすと期待されています。

ビューカメラの特徴・役割

ビューカメラの映像からさまざまな対象を検出・認識できるため、その役割は多岐にわたります。
他のセンサと比較すると安価で、複数台搭載されることが一般的です。
ただし、夜間や雨、濃霧や豪雪などの悪天候では、ポテンシャルを発揮しにくくなります。

また、強い光が当たることで画面が真っ白になってしまう白飛びや、逆光で対象物が真っ黒になる黒つぶれなどの課題もあります。
これらの弱点を補うため、複数台のカメラの映像をコンピュータで合成・編集して見やすくする、カメラの認識精度を向上するなどの技術が開発されています。

ミリ波レーダー

ミリ波レーダーは、2000年代半ばから自動車に用いられるようになりました。
当時は高価格であったことから、搭載は一部の高級車に限定されていましたが、低価格化が進み、さまざまな車種で採用されています。

ミリ波レーダーとは

ミリ波レーダーは、波長の短い電波を発信し、対象物から跳ね返ってくる電波を受信して対象物までの距離や水平角度を検知するセンサです。
ミリ波レーダーの「ミリ波」とは、周波数が30GHzから300GHzまで(波長が1から10mmまで)の電磁波を指します。
ミリ波は直線性が強く、電波でありながら、光のように扱うことができます。

ミリ波レーダーの特徴・役割

ミリ波レーダーは、天候や光の影響を受けにくいという特徴があります。
雨や雪などの悪天候、あるいは夜間で照度が頻繁に変化するような状況でも、精度の高い検知が可能です。
そのため、カメラや後述するLiDARの機能を補うセンサとしての活用が検討されています。

ジャイロセンサ

ジャイロセンサは、回転や向きの変化を検知するセンサで、自動車用としては車両制御用とカーナビゲーション用の2つがあります。

ジャイロセンサとは

ジャイロセンサは、物体の回転や向きの変化を角速度として検知して、どのくらいの角度で曲がったのか、前後や上下に異常な動きがないかなど、車両の走行状態を推定するために重要なセンサです。

ジャイロセンサの特徴・役割

車両制御の用途においては、自動車の細かな挙動を検出し、安定した走行をサポートする役割があります。
例えば、急ハンドルや横滑りなど、左右方向の回転挙動(ヨーイング)を検出した場合には、自動車の姿勢を安定させるために制動をかけます。
カーナビゲーション用では、移動経路や位置情報を推定する目的でジャイロセンサが用いられています。
地下やトンネルなど、GPS単体での測位が難しい環境でも、高精度な測位を継続することができます。

LiDAR

LiDAR(ライダー)は、もともと人工衛星や航空機に搭載されていたもので、地形や森林の構造などを測量する技術でした。
小型化・軽量化が進んだことで、自動運転の分野にも活用が期待されています。

LiDARとは

LiDARは、赤外線レーザーを照射して、対象物からの反射光を受け取るまでの時間から、対象物との距離や形状を検出するセンサです。

LiDARの特徴・役割

LiDARは、赤外線レーザーを用いることから、電波の反射率が低い対象物、例えば段ボールや発泡スチロールなども検知できます。
また、遠方や周辺の物体を一括して認識できること、3Dマッピングデータの作成ができることも、LiDARの特徴です。
いわゆる“真の自動運転”と言われる、レベル3以上の高度な自動運転の実現には、LiDARの存在が必要不可欠とされています。

自動車向けLiDARの本格的な実用化には、いくつかのハードルがあります。
特に大きな課題は価格で、車載向けセンサの中ではもっとも高価であることから一部の高級車への搭載にとどまっているのが現状です。
LiDARの高性能化と低価格化が進むことで、自動運転技術のさらなる発展が見込まれるでしょう。

自動車センサ技術の動向

自動車センサ技術は、今後さらに市場拡大・発展が見込まれている分野です。
国土交通省自動車局の『自動車の高度化に関する動向について(2021年8月)』では、車1台当たりのセンサの採用個数が増加することにより、いっそうの市場拡大が見込まれると報告されています。

センサ技術の進化は、自動運転システムの高度化にも大きく寄与しています。
日本でも、レベル3の自動運転車が公道を走り始め、いよいよ完全な自動運転の実現が現実味を帯びてきています。
自動運転のレベル4、レベル5の実現に向けて、360度センシング技術はより重要度を増しているといえるでしょう。

自動車センサの性能維持・発揮をサポートする透明ヒーター

自動車に用いられるセンサの種類や役割、今後のセンサ技術の動向についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

センシング技術は、人々の安全を確保するためのデバイスとして、多様な分野に活用の場が広がっています。
中でも「LiDAR」は、自動運転技術の発展に欠かせない存在として特に注目されているセンサです。

ジオマテックの薄膜技術とノウハウを活用した『透明ヒーター』は、汚れの付着を軽減する撥水機能、融雪や着雪を防ぐヒーター機能、近赤外の透過率を上げる反射防止機能などを備えており、LiDARやビューカメラのアウターカバーとしてもご活用いただいています。

ジオマテックは、1953年の創業以来一貫して真空成膜技術を磨き続けてきました。
ジオマテックの高機能薄膜は、世界中のさまざまな産業・分野にブレークスルーをもたらし、社会に新たな価値を提供し続けています。
薄膜のことなら、ぜひジオマテックへご相談ください。

関連する製品・ソリューション
関連情報