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植物から発見されたロータス効果!その生物模写技術(biomimetics)の原理と応用例・製品への使用例について詳しく解説

ハスの葉の撥水・自浄作用から発見されたのが、ロータス効果です。
これは、植物の作用を応用した素晴らしい技術のひとつであり、私たちの身近でもさまざまな製品・分野に応用されています。

本記事では、耳慣れない言葉でもある「ロータス効果」について、その原理と撥水効果、応用例、製品使用例などについて説明します。

ロータス効果とは

「Lotus(ロータス)」とは、植物の「蓮(ハス)」という意味があります。これが、水を弾く大きな理由です。

ロータス効果(超撥水)の原理

ロータス効果で見られる超撥水の原理について触れていきます。

接触角が大きいほど撥水性が良くなる

撥水性というのは、水をはじく性質です。
その一方、表面に水などの液体がつきやすい性質をぬれ性といいます。
つまり、「撥水性が良い(悪い)=ぬれ性が悪い(良い)」というわけです。
この撥水性を判断するのが、「接触角」です。
接触角とは、液体の表面と固体が触れるところでできる角のことを言います。
接触角と撥水性の相関関係は、下記のとおりです。

接触角(θ)が 0° に近い 撥水性が悪い
接触角(θ)が 180° に近い 撥水性が良い

一般的には、表面の接触角が 150° 以上であれば、超撥水性表面といわれます。

撥水性と表面張力の関係

撥水性の良し悪しは、液体および接触する個体における表面張力(表面自由エネルギー)の大きさが左右します。
表面張力とは、単位面積あたりの表面自由エネルギーのことです。
この張力(表面積)が大きければ撥水性が悪く、小さければ小さいほど良いことになります。
ハスの葉の場合、表面のワックス成分によって表面積が小さくなり、高い撥水性を有しているのです。

ロータス効果(超撥水)の例

ここでは、ロータス効果(超撥水)について、植物での例と応用例について見ていきましょう。

植物における超撥水性

ロータス効果は、なにもハスだけに見られるものではありません。
ハスは皆さんもご存知のとおり多年生の水生植物です。
同じハス科の植物でもあるキバナハスにも同じような撥水性があります。
その他、ハスの微細構造とは異なりますが、里芋の葉っぱにも似たような撥水性があると言われています。

防水素材

ここからは、ロータス効果の応用例について紹介します。
ロータス効果の応用例で、もっとも有名なものが防水機能です。
たとえば衣類の素材があります。テフロン加工のようなフッ素化合物は、表面張力が水よりもはるかに小さく撥水性も高い素材です。
その他、防水スプレーにもこの技術が使われています。
スプレーの場合、凹凸を作るポリマーなどが含まれており、雨の日に衣類や靴などに吹きかけることで撥水効果が期待できるでしょう。

塗料・外壁材

応用例の2つ目は、住宅建築などでも使われる塗料・外壁材です。
ハスが水に強いのは、表面についている凹凸とワックス成分に理由があります。
外壁材に目に見えにくい凹凸をつけることで、汚れが付着してもそれを洗い流すことができるのです。
また、近年の塗料にはワックス効果のある成分を入れているものが増えています。
その効果により、壁に水が残りにくい作用をもたらしています。
これらは耐久性にもつながっています。一般的に、外壁リフォームを行う目安は約10年ごとです。
しかし、こうしたロータス効果を応用した外壁材は15~20年程度の耐久性があり、大切に使えば長くその耐久性を保てます。

製品利用

ここでは、ロータス効果が実際に使われている製品の一例を紹介します。

ヨーグルトのフタ

身近にあるものでは、皆さんの家庭でもよく見るヨーグルトのフタにも、ロータス効果が取り入れられています。
以前は、ヨーグルトがフタにベッタリとくっついてしまい、スプーンなどで取り除くのに大変な思いをしたことのある人も多かったのではないでしょうか。
しかし、近年ではこのフタに超撥水性の素材を使うことで、移送中や購入後にヨーグルトが衝撃ではねたとしても、フタにはくっつかず下に落ちるのです。
こうした素材に水をたらしてみると、転がるように水が落ちます。

衣類

ロータス効果の応用例で、もっとも有名なもののひとつが衣類です。
その中では、テフロン加工があります。テフロン加工とは、フッ素樹脂加工の意味です。
この加工がかかっていると、汚れから守る防汚性、防油性、撥水性の効果を持ちます。
たとえば、水を落としてみると、水をはじくとともに染み込まない効果があります。
どのような衣類で使われているのかというと、裏フリースやブルゾン、防寒着(ウィンドブレーカー)などです。
その他、作業着にも使われています。

フライパン

料理好きな人はもちろんのこと、あまり料理をしない人でも必ずひとつくらいはフライパンを持っているでしょう。
試しにフライパンに水を流してみましょう。球状の水滴ができるはずです。
これも、ロータス効果を応用しています。

ロータス効果の応用例はいろいろなところに広がっている

本記事では、ロータス効果とその原理、超撥水性の例と原理、その応用例についてご紹介しました。
ハスの葉は、そのワックス効果と細かい凹凸により、高い撥水性を持っています。
実際、その特性を生かした衣類・調理器具の素材やさまざまな製品が研究開発されています。
今後も、研究が進むことで新しい製品が出てくる可能性があるでしょう。

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