お役立ちコラム

発電方法の種類とカーボンニュートラルの鍵を握る
次世代太陽光について解説

発電する方法は、火力・原子力・水力・風力などさまざまで、それぞれメリット・デメリットがあります。
また、2050年のカーボンニュートラルを目指し、次世代太陽光への注目も集まっています。

そこで本記事では、各発電方法の原理や特徴を踏まえたうえで、将来の次世代太陽光について解説します。
発電方法の違いを知りたいかた、次世代太陽光電池向け「透明電極」に興味をお持ちのかたは、ぜひ最後までご覧ください。

発電方法の種類

電気をつくるために利用するエネルギーによって、さまざまな発電方法があります。
そのうち、以下の7種類について解説します。

火力発電の原理と特徴

火力発電とは、石油や石炭・天然ガスなどの化石燃料を燃やした際の熱エネルギーを利用する方法です。

火力発電の原理

火力発電の方式は、汽力発電・内燃発電・ガスタービン発電などがあります。
主力の汽力発電では、燃料を燃やした際の熱エネルギーで水を沸騰させ、高圧の蒸気をつくります。
この蒸気でタービンを回して電気をつくる仕組みです。
タービンを回した蒸気は水に戻り、再び沸かされて繰り返し利用されます。

火力発電のメリット

火力発電は、天候に影響されることなく、安定的に発電できます。
また、需要に応じて発電量を柔軟に調節できることも大きなメリットです。

火力発電のデメリット

火力発電は、燃料を燃やすときに二酸化炭素を排出します。
地球温暖化対策として二酸化炭素排出量削減に取り組むうえで、火力発電を減らすことが求められます。
また、日本は国内で燃料を調達できず輸入に頼っていること、化石燃料の資源が有限であることなど課題が多く、持続可能ではない発電方法となっています。

原子力発電の原理と特徴

原子力発電とは、ウラン燃料を核分裂させたエネルギーを利用する方法です。

原子力発電の原理

火力発電が化石燃料を燃やすのに対して原子力発電は、ウランの核分裂で熱エネルギーを得て蒸気をつくります。
蒸気でタービンを回して電気をつくるのは火力発電の汽力発電と同じ仕組みです。

原子力発電のメリット

原子力発電は、少量の燃料で膨大なエネルギーを得られ、政情の安定した国々から燃料を調達できるため、化石燃料を使う火力発電に比べて低コストで発電できます。
また、発電時に二酸化炭素を排出しないため、二酸化炭素排出量削減、地球温暖化対策に有効です。

原子力発電のデメリット

原子力発電は、二酸化炭素を排出しないかわりに放射性廃棄物を出します。
万が一、放射性廃棄物が漏れると深刻な環境破壊につながるため、厳重な管理が必要です。
放射性廃棄物の処理・処分、使わなくなった原子炉を廃炉するために莫大な費用と年月がかかるなど、多くの課題を抱えています。

水力発電の原理と特徴

水力発電とは、水の位置エネルギーを利用する方法です。

水力発電の原理

水力発電は、水が高いところから低いところへ落ちる力で水車を回して電気をつくります。
ダムに水を貯めてから落とす貯水池式や、水路をつくって河川の流れを利用する水路式などがあります。

水力発電のメリット

水力発電は、燃料を燃やさないため二酸化炭素を排出せず、放射性物質が漏れるリスクもない持続可能な発電方法といえます。
また、水力発電は、山に降った雨が川になって流れる自然の水の循環を利用してる再生可能エネルギーのひとつで、雨が多く起伏に富んだ地形の日本に適しています。

水力発電のデメリット

水力発電は、水の落差が重要であることから大規模な貯水式発電所は山岳部に建設する必要があり、ダムや発電所の建設、送電設備の敷設に費用がかかります。
また、ダムで川をせき止めるので河川の生態系や周囲の森林に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、上流流域の降水量の影響を受けることがデメリットと考えられます。

風力発電の原理と特徴

風力発電とは、風の力を利用する発電方法です。

風力発電の原理

風力発電は、風車の回転の力を発電機に伝えて発電する仕組みです。
風車の回転軸が地面に対して水平な「水平軸風車」と垂直な「垂直軸風車」の2種類あり、大規模な発電には効率のよい「水平軸風車」が採用されています。
風力発電機には、風の強さや向きにあわせて羽根の角度や風車の向きを調節したり、風が強すぎるときは破損を防ぐために停止させたりする制御機構が組み込まれています。

風力発電のメリット

風力発電は、風さえ吹いていれば、晴天時も雨天時も昼夜問わず発電できます。
燃料を使わず、発電時に二酸化炭素を出さない再生可能エネルギーです。

風力発電のデメリット

風力発電は、風速によって発電量が不安定になるため、一定以上の風がいつも吹いているような場所に設置する必要があります。
また、騒音や風車の影によるシャドーフリッカーなど環境への影響があり、周囲に人が住んでいるような場所には設置しにくいという問題があります。

太陽光発電の原理と特徴

太陽光発電とは、半導体に光をあてたときの光起電力効果という現象を利用する発電方法です。

太陽光発電の原理

太陽光発電に使われる太陽電池にはさまざまな種類がありますが、ソーラーパネルとして太陽光発電に使われているのはシリコン系太陽電池です。
シリコン系太陽電池は、n型半導体のシリコンとp型半導体のシリコンを重ねてあり、そこに光があたると電子(マイナス)と正孔(プラス)が生じて、電極から電力として取り出す仕組みです。

太陽光発電のメリット

太陽光発電は、太陽の光エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため燃料を使いません。
ソーラーパネルを太陽光が当たる場所に設置すればよいため、空き地や屋根の上などの空きスペースを有効活用できます。
また、故障が少なく維持コストを低く抑えられます。

太陽光発電のデメリット

太陽光発電は、天気や季節で発電量が変動することが避けられず、晴れた日に比べて曇りや雨の日は、発電量が半分以下になることもあります。
ほかにも、夜間は発電できない、導入コストが高いなどのデメリットがあります。

バイオマス発電の原理と特徴

バイオマス発電とは、生物が作り出すエネルギー資源、バイオマスを利用する発電方法です。

バイオマス発電の原理

バイオマス発電は、バイオマスを燃料とする火力発電の一種です。
バイオマス燃料には、間伐材や建築廃材などの木質燃料、サトウキビや穀物を発酵させてつくるバイオエタノール、家畜の排せつ物や生ごみなどが微生物によって分解されるときに発生する生物化学的ガスなどがあります。
木質燃料を使うバイオマス発電には、そのまま燃やす直接燃焼方式のほかに、木材を蒸し焼きにしたときに発生する可燃性ガスを燃やす熱分解ガス化方式などがあります。

バイオマス発電のメリット

木質燃料を使ったバイオマス発電は、二酸化炭素を排出する火力発電ですが、植物が成長するときに光合成で大気中の二酸化炭素を使っていることから、実質的な二酸化炭素排出量がゼロであるカーボンニュートラルであるとされます。
また、廃棄物を利用する生物化学的ガス化方式は、循環型社会の実現につながります。

バイオマス発電のデメリット

バイオマス発電は、燃料の調達、運搬、加工、保管に費用がかかるうえに発電効率が悪いというデメリットがあります。
また、運搬や加工にエネルギーを使うとカーボンニュートラルではなくなる、大規模な木質燃料バイオマス発電は森林資源の破壊につながるなどの懸念があり、十分に持続可能性を考える必要があります。

振動発電の原理と特徴

振動発電とは、機械や人の動きなどで発生する振動のエネルギーを利用する発電方法です。

振動発電の原理

振動発電は、振動の力を電磁誘導や圧電効果を利用して電気エネルギーに変換する仕組みです。
例えば、床発電では床に圧電素子を敷き詰めて、人の歩行や自動車の走行で床に与える振動利用します。
空気の振動、音を利用する音力発電も振動発電の一種です。

振動発電のメリット

道路やビルなどさまざまな場所に発電システムを設置でき、ほとんどランニングコストがかかりません。
音や振動のエネルギーを電気エネルギーに変換することで、防音や防振の効果が期待できます。

振動発電のデメリット

振動のエネルギーは微小で、大きな電力を発電することはできません。
実用化されているのは、発電したその場で照明やセンサーなど、消費電力が小さい機器を動かす用途です。
また、機械や自動車の振動を利用するには、頑丈な構造にしなければなりません。

発電種類のメリットとデメリットまとめ

2020年度日本の電源構成と2030年度目標

資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」によると、2020年度の日本の電源構成は以下の通りです。

2020年度時点では、再生可能エネルギーは電源構成全体の2割程度にとどまっています。

2021年に発表された「第6次エネルギー基本計画」では、
2050年のカーボンニュートラル実現に向けた長期的展望と、それを踏まえた2030年の新たな温室効果ガス排出削減目標が提示されました。

同計画では、2030年度までに二酸化炭素を46%削減し、再生可能エネルギーを主力電源とすることが目指されています。
電源構成において再生エネルギーが36〜38%(内訳:太陽光14〜16%、水力11%、風力5%、バイオマス5%、地熱1%)を占めることが目標です。

出所:自然エネルギー財団作成資料

また、エネルギー政策の基本的視点として「S+3E」が確認されました。
安全性(Safety)を前提に、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給や、環境への適合(Environment)を図るものです。

2050年度カーボンニュートラルを目指して

上記でも触れた通り、2050年度のカーボンニュートラル実現を目指し、「第6次エネルギー基本計画」が発表されました。
また、計画の実行にあたり欠かせないのが、再生可能エネルギーの普及拡大です。
中でも、現在の再生可能エネルギーを牽引する太陽光発電は、既存の課題を乗り越えた「次世代大陽光」へと進化が求められます。

第6次エネルギー基本計画の説明

「第6次エネルギー基本計画」とは、2050年のカーボンニュートラルと、それを見越した2030年度の46%削減、さらに50%の高みを目指した新たな削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すものです。
世界的な脱炭素化の動きの中で、国際的なルール形成を先導し、日本が有する脱炭素技術や 新たなイノベーションにより、国際的競争力を高めることが目指されています。
また、日本のエネルギー需給構造が抱える課題を克服し、電力の安定供給を確立することも、重要なテーマの一つです。
安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給や経済効率向上によるコストの低減、環境への適合を図る「S+3E」の大原則を追求する取組が進められます。

同計画は主に、① 東電福島第一の事故後10年の歩み、② 2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応、③ 2050年を見据えた2030年に向けた政策対応のパートから構成されています。

次世代太陽光の必要性

日本は国土面積あたりの太陽光設備導入容量が主要国で1位であり、主力再生可能エネルギーとして、今後も導入拡大が欠かせません。
しかし、導入拡大に向けた制約が多くなるにつれ、地域と共生しながら安価に事業を実施できる適地が不足してきていることが懸念されています。
そこで、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すためには、立地制約を克服した次世代太陽光の開発が不可欠です。
耐荷重の小さい屋根や建物など、既存技術では設置が難しい場所にも導入を進めるため、性能を落とさず軽量・柔軟などの特徴を兼ね備えた次世代太陽光が求められます。

次世代太陽光の特徴

現在、導入設備の95%をシリコン系の太陽電池が占めている中、シリコン系に対抗しうると有望視されているのが有機系プロブスカイトです。
プロブスカイト太陽電池は、直近7年間で変換効率が2倍に向上しており、軽量・柔軟・低コスト化が可能です。
主要材料であるヨウ素の生産量は、日本が世界シェア30%を占めており、高い競争力も期待されます。
一方で、耐久性の強化や大面積化、さらなる変換効率の向上が課題として挙げられます。

以下の記事では、次世代太陽電池の種類について紹介しています。あわせてご覧ください。

次世代太陽光の日本の立ち位置

日本では大学や研究開発機関、民間企業などを中心に研究が進められており、世界最高の変換効率を記録するモジュールのプロトタイプ製作に成功するなど、世界をリードしています。
一方で、世界中でも官民を挙げた実用化への開発競争が激化しています。
日本はこれまで培った強みや過去の反省を活かし、ペロブスカイト太陽電池の市場獲得に向けた戦略を立て、開発を加速することが不可欠です。

カーボンニュートラル実現の鍵を握る次世代太陽電池

いかがでしたでしょうか。
今回は各発電方法の原理や特徴を解説し、将来を見据えたエネルギー政策について紹介しました。
カーボンニュートラル実現の鍵を握るのが、次世代太陽光の開発です。
透明なのに電気を通す『透明導電膜・ITO膜』は、次世代太陽電池の透明電極に適しています。
詳しくはこちらの「透明電極形成」のページをご覧ください。

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