お役立ちコラム

製造の基本技術、薄膜とは?
その厚さ・用途・コーティングについて徹底解説

多くの電子部品や工具などで使われているのが薄膜です。
しかし、身近にあるにも関わらず技術者・設計者でも、なんとなく知っている程度で詳しいことはわからないことが多いようです。

そこで、本記事では「薄膜とは?」という基本的なところからその厚さ・用途・コーティングについて徹底解説します。

薄膜とは

薄膜とは、通常「基材や基板などの表面にある膜」のことです。
広義の意味では、メッキや薄く延ばされた金箔などのように独立している膜も含まれますが、通常は前者のみを指します。
読み方は「はくまく」です。
薄膜は、膜の厚みによって以下のように分類されます。

数nm ~ 1µm以下 薄膜
数nm以下 超薄膜

薄膜の用途

薄膜は、パソコンで使うメモリやCPU、HDDの記録面、液晶ディスプレイなどで使われています。
ほかにも、レンズの性能向上、電子部品の電極、製造現場や工事現場で使われる工具の強化など、さまざまな用途で活用されています。
具体的に、どのように活用されているのか紹介します。

光学的な用途

3つの薄膜について説明します。

反射防止膜

反射防止膜とは、光の反射を抑えて透過率を向上させる薄膜です。
ガラスの映り込み防止や、ゴーストを防ぐためにカメラのレンズに使われています。
自動車のヘッドライト、CD・DVDプレーヤーのピックアップ、光ファイバー端面、レーザー加工機など、さまざまな用途があります。

以下の記事では、反射防止膜について解説しています。あわせてご覧ください。

フィルタ膜

フィルタ膜とは、光を弱めたり、特定の波長範囲の光だけを透過させたりする目的で使われる光学薄膜です。
屈折率が異なる複数の薄膜を組み合わせて作ります。
医療機器、分析装置、プロジェクターなどで使われています。

透明導電膜

透明導電膜とは、導電性と可視光を透過する性質の両方を持った材料で作られた薄膜です。
そのため、外観上は透明で目視はできません。で、外観上は透明です。
ガラスやフィルムの表面に形成することで透明電極となります。
私たちが日常使用しているスマートフォンのディスプレイ、液晶ディスプレイ・タッチパネル、電子ペーパーの画面、太陽電池の電極などに用いられています。
酸化スズや酸化インジウムスズが主な原料ですが、最近ではカーボンナノチューブなども使われます。

電磁気的な用途

電磁気的な用途を3つ紹介します。

集積回路

集積回路とは、基板に真空蒸着法で抵抗素子やコンデンサを形成し、トランジスタと組み合わせて作った回路のことです。
主に半導体デバイス(DRAM・LSI)など、コンピュータや家庭用電気製品などで使用されます。

表示デバイス

スマートフォンやタブレットのタッチパネルディスプレイや液晶ディスプレイなどで用いられます。
先にも紹介した「透明導電膜」や「反射防止膜」、「撥水・防汚膜」などと併せてコーティングされています。

太陽電池膜

太陽電池で使われているのが、シランガスをプラズマ化学蒸着して作られるアモルファスシリコン膜です。
この膜によって、低コスト化が図られています。
以下の記事では、次世代太陽電池について解説しています。あわせてご覧ください。

機械的な用途

機械的な用途で用いられる薄膜について、2つ説明します。

耐摩耗性膜

製造現場で使われる工作機械や工事現場で使われる工具のドリルビットなど、さまざまな金型の表面に施される薄膜が耐摩耗性膜です。

固体潤滑膜

軸受などすべり面の摩擦を減らすために使われるのが、潤滑油やグリースです。
しかし、精密機器や宇宙空間など、それらを使えない場合、軸受や歯車に固体潤滑膜が使われます。

化学的な用途

化学的な用途で使われる薄膜について、2つ紹介します。

耐食性膜

金属が錆びないように、一般的にはめっきや塗装を使いますが、用途によっては薄膜を使うこともあります。
物理蒸着や化学蒸着で、均一で剥がれにくい耐食性膜を形成できます。

バリア膜

バリア膜の例として、食品包装用フィルムがあります。
酸素や水分、紫外線を遮断して食品を保存するために、バリア膜をつかっています。

薄膜を形成する方法

薄膜を形成する方法で一般的なものは、真空成膜です。
真空成膜では、真空中で膜の材料を基板の表面に堆積させます。

真空成膜の方法

真空成膜の方法は、大きくわけて2つあります。

真空成膜以外の方法

膜を形成する方法として、真空成膜以外にはメッキ、溶射、塗装、スプレー法などもあります。
ただし、真空成膜よりも膜が厚くなることが多いので、塗膜や皮膜と呼ぶほうがわかりやすいかもしれません。

スパッタリング

PVDのひとつであるスパッタリングは、薄膜を形成する代表的な方法です。
使用できる材料の幅広さ、高い密着性、制御のしやすさ、熱に弱い対象物にもコーティングできるなどの利点があり、液晶ディスプレイやLEDで使われる透明導電膜、プラスチック表面の装飾膜などにもスパッタリングが使われます。

以下の記事で、詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

私たちの生活に密着している薄膜の用途についてしっかりと知ろう

本記事では、わたしたちの身近なところで使われている薄膜について説明してきました。
さまざまな分野で薄膜を使っているにもかかわらず、技術・設計に携わる人でも詳しいことはわからないことも多いようです。
本記事が、薄膜について学ぶチャンスになれば幸いです。

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詳しくはこちらの「薄膜の活用事例」のページをご覧ください。

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