CUSTOMER REPORT 03
固体型色素増感太陽電池向け
透明導電膜
持続可能なエネルギーの未来を次世代太陽電池で追求
株式会社リコー 様
課題と背景
「充電のない世界」の実現に向けて、
室内の光で発電でき、交換が不要な電池を開発したい。
解決方法
高出力な固体型色素増感太陽電池の構成に不可欠な、
平滑性と耐熱性に優れた透明導電膜を提供。
Voice
難しい注文にも迅速かつ的確に応えてくれる技術力の高さに感銘を受けています。
私達が所属するビジネスユニット「リコーフューチャーズ」内のEnergy Harvesting(以下、EH)事業センターでは、「充電のない世界」をつくることを目標に掲げ、固体型色素増感太陽電池(以下、DSSC=Dye Sensitized Solar Cell)やフレキシブルな有機薄膜太陽電池(以下、OPV=Organic PhotoVoltaics)、ペロブスカイト太陽電池(以下、PSC=Perovskite Solar Cells、JAXAと共同開発)等、次世代太陽電池の開発に取り組んでいます。太陽電池の開発自体は、社内体制の変更前から同じメンバーで長年従事してきたもので、ジオマテックさんとのお付き合いも10年以上になります。開発の背景には、元々当社で扱ってきた複写機の中に使われている有機感光体(以下、OPC=Organic PhotoConductor)の技術が太陽電池の技術構成に非常に類似していること、このOPCのパーツを私達が長期にわたって開発してきたことがあります。
2021年5月、ジオマテックさんにご協力いただきながら、発電量が従来比20%向上の「RICOH EH DSSCシリーズ」を発売しました。さらに9月以降、環境センサやデバイス商品としてもラインアップを拡充することができ、おかげさまで様々なお客様からお引き合いをいただいています。ジオマテックさんには、DSSCを構成するガラス基板の重要なパーツである透明導電膜を作成いただいています。
また、現在試作段階のOPVにおいては、材料構成の相談から真摯に対応いただき、半年間で2、3回の試作を行い、製品にかなり近いレベルのものを仕上げてくださりました。当社の要望に的確に、かつスピード感を持って応えてくださる技術力の高さには、感銘を受けています。
Technology
GEOMATECの透明導電膜
- 『透明導電膜・ITO膜』の知見とスパッタリング法による形成技術で、世界最高峰を自負。
- 「透明度」「電気抵抗」「平坦度」「耐久性」「曲げ性」など、お客さまの目的に応じた最適なバランスをご提案。
- 技術的発展が望めることは安易に諦めず、カスタマイズ提案はもちろん、独自の薄膜材料や薄膜製造装置を開発してでも可能に。
リコー様の固体型色素増感太陽電池(DSSC)の構造と原理
- 1.透明導電膜の基板(陰極)で受光する。
- 2.増感色素が光を吸収して電子が励起される。
- 3.励起された電子が電子輸送層に注入される。
- 4.注入された電子がホールブロック層を経て、透明導電膜の基板(陰極)に流れる。
- 5.陰極に注入された電子は、外部回路を通って金属電極(陽極)に注入される。
- 6.注入された電子は、ホール輸送性材料を経て増感色素に到達する。
1~6の繰り返しによって、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
「ホールブロック層」と「透明電極」にジオマテックの薄膜が使用されています。
Solution
“完全固体型”のDSSC完成に向けて
DSSCの構成要素のうち、ホール輸送性材料には、一般的に液体材料が使用されますが、EH事業センター様は固体材料の中に液体材料が分散している状況に違和感を抱き、DSSCを“完全固体型”とするべく検討を続けました。「液体型のDSSCと固体型のDSSCでは特性を活かせる材料が異なり、幅広い視点から材料を探し、評価する必要がありました。そのような中で、ジオマテックさんにご提案いただいた透明導電膜が固体型DSSCに適していることが分かったのです。材料選定の課題解決に、大きく貢献しました」とEH事業センター様は語ります。
太陽光ではなく、室内光での発電に特化
固体型DSSCの検討を進めていくと、従来のDSSCとは異なり、太陽光よりも室内光のような低照度下で高出力が得られる特性があると分かってきました。そして、試行錯誤を重ねた結果、辿り着いた構成要素の一部である透明電極には、500℃近い焼成温度への耐性と、表面の平滑性が必要。EH事業センター様には「ジオマテックさんの透明導電膜は耐熱性に優れ、表面もフラットかつ透過率も高いことから、当社の開発する固体型DSSCに非常に効果的な基板です」とご評価いただいています。
固体型DSSCの可能性
色を変えられたり、透明にできたりする固体型DSSCの特徴を活かし、将来的にはスマートフォンに対する補助電源などの開発を検討されているEH事業センター様は、語ります。「他のメーカーとも取引がありますが、細かい仕様を詰めながら当社が求める結果を達成してくれるメーカーとは、ジオマテックさんを除いて巡り合えていません。今後もご協力いただけたらと考えています」
Mission
お客様との強固な信頼関係があってこそ、試作~製品化のスムーズな展開が実現しました。
固体型DSSCのリリースを受けて、当社が開発した透明導電膜の技術をお客様が製品に採用し、世に出してくださったことへの喜びを実感しました。DSSCを搭載したマウス発売の知らせを受けた時には、すぐさま購入しました。リコー様とは長年のお付き合いで、当社の技術力に信頼を置いていただけていたことから、試作等のやり取りをスムーズに行うことができたと感じています。営業と技術で立場は異なりますが、私達がお客様対応の際に心がけているのは共通して、お客様のご要望を正確に把握し、お客様にとっての最適解を素早くご提案することです。また、お客様にとって不都合な点を隠さずにお伝えする誠実さも忘れずに、今後も努めてまいります。
世の中に新たな価値をもたらす薄膜材料や薄膜形成技術の研究・開発により、お客様の未来の製品の実現に寄与します。
薄膜の機能を決定づけるのは、材料が持つ性質とそれを扱う技術・ノウハウ。
1953年の創業以来、当社は、時代の進化や多様なニーズに対応し続けるため、薄膜材料や薄膜形成の要素技術の研究・開発を推進しています。
大学・研究機関との連携、ビジネスパートナーシップなども通じた研究開発体制で、お客様の未来の製品の実現に寄与し、付加価値の高い製品・サービスや技術を創出することで、社会の発展に貢献してまいります。
お客様プロフィール
株式会社リコー 様
SDGs達成への貢献を念頭においた事業活動に取り組まれている株式会社リコー様では、2021年4月に社内カンパニー制度が導入され、事業毎に5つのビジネスユニットが存在します。DSSCやOPV、そしてJAXAと共同開発中のPSC等の開発を担当する部隊は「リコーフューチャーズ」と呼ばれ、次世代太陽電池のほか、社会インフラのモニタリングや遺伝子検査用標準物質の販売などを通じて、社会課題の解決を目指されています。
所在地 (本社)〒143-8555 東京都大田区中馬込1-3-6
(沼津事業所 南プラント)〒410-8505 静岡県沼津市本田町16-1
https://jp.ricoh.com/
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